前回の記事でUXデザインのアプローチを取り上げましたが、引き続き掘り下げていきます。前回はブリーフィングをUXデザイナーが再定義すべきと書きましたが、全てのビジネスのケースで、予算の問題やリソースの問題だったりと、プロジェクトの最初から必ずしもUXデザイナーが確保できるとは限りません。多くの場合、プロジェクトのきっかけは社内や顧客との会話や、日常生活の中から生まれることがほとんどで、そのときに身近にUXデザイナーがいることは滅多にないです。
そこでUXデザイナーがいなくても、プロジェクトを開始するためにやらなくてはいけないことをここで紹介していきます。

ブランディングの確認
UXデザインを実践する上で欠かせないのは、ブランドとの関係性です。あなたのビジネスの印象と、提供する製品やサービスを通してユーザーが受け取る印象の間に大きなギャップがあってしまっては、ブランディングが成り立たないのは当然なことで、ユーザーをエンゲージすることは非常に難しいです。
Airbnbを例に考えてみましょう。彼らは旅行体験をダイナミックに変えたわけですが、彼らのホームページがただのコーポレートサイトのように堅い、真面目な印象だったとしたらどうでしょうか?実際、Airbnbがブランドリニューアルをする2014年より前までは、彼らのホームページは典型的な旅行予約サイトと印象は変わらず、ロゴも全く違うものでした。しかしリニューアル後はご存知のとおり、Experienceという新しいチャンネルを開設したり、様々なイベントを通して全く新しい価値を伝えることに成功しています。
Airbnbだけでなく、Appleも非常にわかりやすい例です。もしAppleのブランドイメージがMicrosoftやGoogleに近いものだったとしたら、彼らの製品はどうなっていたでしょう?iPhoneという名前でスマートフォンがリリースされていたでしょうか?
このようにUXデザインを実践するときにブランドの存在を無視することはできません。これから生まれる新しい企業の製品やサービスをUX Designで実践していくのであれば、ブランドも同時に開発していく必要があります。一方で、すでに存在している企業の中で実践していくのであれば、その企業のブランドを考慮、または製品やサービスをどう売っていくのかを考慮した上で、ブランドとUXの関係性を見極めないといけません。

ブランドガイドラインの存在の有無によってわかれる進め方
ブランディングを明示しているのがブランドガイドラインですが、このガイドラインがUXデザインを実践するときに存在しているのかどうかが、プロジェクトを進める上で大きな分かれ道になります。
ブランドガイドラインの詳細の説明はここでは割愛しますが、最低でもブランドバリュー、ブランドミッション、ムードボード(世界観)、この3点はUX Designの実践において欠かせません。とくにブランドバリューというのは、ブランドが提供する製品やサービスの購入と利用を通して消費者が受け取る価値や印象から成り立ってます。例えばIKEAを想像してみましょう。IKEAは8つのキーバリューを提唱していますが、その1つにコスト意識(Cost-consciousness)があります。もしコストを度外視した、しかし最高の、かつて誰も見たことのないUXが得られる家具をIKEAが販売したとしたらどうでしょうか?
このように製品やサービスの利用で消費者にもたらす価値やイメージとブランドには密接な関係があります。ブランドの概念と製品とサービスの関係性を無視している場合、UXデザインはおろか、ビジネスそのものを持続性もって行うことは不可能です。ブランドガイドラインがある場合、まずブランドバリューがどのような活動や製品を通して提供されるものなのかをしっかり確認した上で、UXデザインのブリーフィングを作成します。もし、ブランドガイドラインがない場合、製品やサービスの利用でどのような価値を提供することがビジネスに繋がるのかをUXデザインの実践を通して明文化していきます。

経営メンバーの関わり方
ブランディングというと多くの方は、GucciやNikeといったアパレルやスポーツブランド、TOYOTAやJALといった車や飛行機会社など、規模の大きい企業やB2C企業でしか実践できる、または必要があるものだと考えている人が多いです。しかし、これは完全に間違いです。B2BなのかB2Cなのかビジネスの大小関係なく、あなたが関わっている、または仕掛けているビジネスが相手にどういった印象で伝わっていく、そして伝えるべきなのか、この答えを事前に用意していく必要があります。会社のロゴやプレゼン資料を作るときに見せ方は誰もが気になりますよね?予算の確保が難しい規模の小さい会社やB2B企業の多くはブランディングを実践していないため、このような企業でUXデザインを実践すると、ほとんどのケースで失敗します。実際にそういったケースに数多く直面してきました。
では失敗しないためにはどうするか?ずばり、ブランディングの必要性を製品とサービスの開発において、経営メンバーがどこまで理解しているかどうか次第です。大規模な予算をかけなくてもブランディングを実践することは可能ですし、UXデザインも同様です。大事なことは、UXデザインのプロジェクトには概念として用意されていなければいけないものが数多く存在しているという事実を、経営メンバーがまず認識することです。認識した上で、プロジェクトの進め方をしっかり設計する必要があります。




















